何も映っていないように見えて片隅で謎が起きている/ソール・ライター

永遠のソール・ライター展@Bunkamura ”はまった”

パンフレットの写真が色美しく気になって足を向けた。ソール・ライターがどんな人物か予備知識もなく。そして写真というと私には少し子難しく、どこか理屈っぽいと感じるところもあり今まで積極的に鑑賞することはあまりなかった。しかしこの展覧会のおかげで私の見方は変わった。ソール・ライターの作品にはまった。展示はモノクロームから入りカラーへと進む。約200点の作品を通してみることの凄さを改めて実感する。

まず、モノクロームの世界の中。とても構図のバランスがいい。「読む」という作品では女性のハイヒールがとても印象的で地面を白く飛ばしていることでとても印象深い。「尼層」ではストールがたなびき画面に▲の構図が面白い。挙げ出したらきりがない。「散歩」では作者はどこまで意図したか、多分意図していないだろうが黒人の女の子が白いワンピースを着て遠くに歩いている。なんのことはない日常だが年代、アメリカを想うと少し政治的意図も感じ取れる。ライターは画面を線で切るなと。その直線で切られた部分に空間と、また目には見えない世界の境界を感じる。覗くような構図も多い。何だろう、どんどんライターの息遣いが聞こえる、呼吸する湿度を感じる。何だろう体温を感じる、水に潜った時の不思議な音が聞こえるような感じとでもいうのか。

カラー。色が、光が美しい。「grey umbrella」これは面白かった。モノクロのgreyと違う。温かみあるgrey,奥深いgrey,様々なgreyが存在し、今まで深く考えなかったカラーついて”はっ”とさせられる。また、赤の使い方も印象的だ。浮世絵やキュビズムの影響を受けた作品も多くみられる。モチーフに水滴、雨、蒸気、雪、映り込みなども特徴的で面白い。

何気ない日常を捉えた作品は、日常は非日常を、様々な人が同じ時間を生きている事にきづかされる。私は自分の見たいものだけ見ている。ライターの言葉に「何も映っていないように見えて片隅で謎が起きている」とある。ライターの作品を観るとなるほどと思おうと同時に、自分自身の人生観を振り返るきっかけとなった。