只々、空間を楽しむクリスチャン・ボルタンスキー

クリスチャン・ボルタンスキー Lifetime@国立新美術館

会期終了近くなり、気になっていたボルタンスキー展へ赴く。ほとんどこの作者について知らないまま。パンフレットをみて面白そうだから行ってみよう。そんな感じだ。

入ってすぐ、私は気分が悪い方向に胸がざわめくのを感じた。グロテスクな感じ、否が応でも人間である事を実感させられる。そして闇の中を歩くような作品群。光の走り方や、鼓動の音、空調が効いているのにぬるま暖かい感じ。どうにもこうにも、肖像たちが私に迫ってくる。様々な表現で。私の中に記憶する様々な感情が腹の底から顔を覗かせる。沖縄戦指令軍跡地、ひめゆり会館で感じた感触も思い出す。きっと展示の仕方がよく似ているからだろう。ユダヤ系の肖像も見られる。そこから戦争という記憶が一つ。そして一人ひとりが生きていることの重さを感じる。誰もが抱える感情を、不安を、日常を生きることを考えさせられる。

この展示には、はじめにとか●●美術館に感謝とか、作品名も記されていない。そこが新鮮で私は気に入った。私の中の五感と記憶、様々なものを使って空間に居られる。自由に感じて、と空間が言っているように思った。

入った時胸のざわめきは、出るころには私自身が肉体のない魂のようになった気分がした。来世どこにうまれるのか。哲学的展示。かなり刺激になった。

最後にはたと気づくと、暗い中で入り口でもらったパンフレット(新聞のようなもの)を一生懸命みている人達が多いことに驚く。そこにある文字ではなく、今ここで創りだれれている空間を味わったほうが、もっと楽しいのではないかと私は思う。